
久しぶりに面白い投資本を読んだので紹介します。
本の名前は「世界のエリート投資家は何を考えているのか」
自己啓発本だと思いきやかなり真っ当な投資本で参考になります。
前から読みたかったのですがkindle版が発売されていなくて日本に戻った時に購入しました。
特にネットで気になっていた「レイ・ダリオ氏」が個人投資家向けに紹介したポートフォリオ「オール・ウェザー(全天候型)」ポートフォリオとその考え方を紹介します。
レイ・ダリオ氏とは
ヘッジファンド「ピュア・アルファ」の運用者で1991年から平均年利21%の運用をしている伝説のファンドマネージャー
元々この人のことは全く知らなくて、知るようになったのきっかけは、レイ・ダリオ氏の投資法をアレンジした三倍のブル型のETFを使ったポートフォリオが低リスク・高リターンで運用できると紹介したブログを読んだのが最初です。
このブログの中でレバレッジ型ETFを使ったポートフォリオを紹介しているので参考にしている方は読んで見てください。面白い考えだと思います。
ただし、私はレバレッジ型のETFの運用はリスクが高く暴落時に予想外の変動があるのではと考えているので実践するつもりはありません。またレバレッジ型ETFは実質コストが1%ほどあるのでコストが高いですね。
(ダメだと言っているわけでありません。)
私が興味を示したのはレイ・ダリオ氏が個人投資家向けに紹介したETFを利用したシンプルなポートフォリオとその考え方です。
レイ・ダリオ氏の考え方を紹介します。
- 上がる資産は必ず下がる
- どんな資産に投資していようともほぼ確実に生涯に一度は、資産価値が50%〜70%下落する株価の大暴落に遭遇する
- 株式は債券の「3倍のリスク」がある
- どんな投資商品も「理想な環境」が整うと大きな利益が生まれる
- 個人投資家のリスク許容度は本人が考えるよりずっと低い
彼は経済には季節がありその季節が訪れたその季節にあった商品は上昇する。しかしどんな商品も必ず暴落すると警告しています。
そして個人投資家のリスク許容度は本人が考えているよりずっと小さい、これは全ての投資家は残念だか認識すべきことと警告しています。
レイ・ダリオ氏がいう経済の季節とは
- 経済成長(想定成長より高い)
- 経済停滞(想定成長より低い)
- インフレ(想定インフレ率より高い)
- デフレ(想定インフレ率より低い)
経済にはこの4つの季節があるが、実際の季節とは違い経済の季節が訪れる順番は決まっていないと言います。
つまりこの4つの季節に合う商品を4分の一ずつ投資をすれば分散されたPFになると言い、次の商品を紹介しています。
成長時
- 株式
- 社債
- 商品取引
- 金
停滞時
- 長期米国債
- 物価連動債
インフレ
- 商品取引
- 金
- 物価連動債
デフレ
- 長期米国債
- 株式
そして通常紹介される債券と株の分散されたポートフォリオは(例えば株式50%・債券50%など)は「リスク」と「安全」のバランスが取れていないと本書では語っています。
「株式50%・債券50%の資産配分だと、実施のリスクは株式95%・債券5%になってしまう」
株・債券が50%ずつの配分は一見バランスが取れているように見えるが、株価の値動きが激しいため、実際のリスクは95%以上になる。だから株価が下落すればポートフォリオ全体が下落してしまい、バランスが取れていない。
そして、その株価のリスクを下げる方法が紹介した4つの季節に分散した商品に投資する
「オール・ウェザー(全天候型)」というわけです。
実際はリスクヘッジやレバレッジをかけて運用しているため、紹介するポートフォリオは完璧なものではないと本書で書かれています。個人投資家でも可能なよりベターなポートフォリオとなっています。
本書ではこのポートフォリオを「オール・シーズン戦略」として紹介されています。
これ読むとかなり説得力ありますよね。
それではレイ・ダリオ氏が個人投資家向けに紹介したポートフォリオがこちらです。
株式(S&P500やインデックスを利用する) | 30% |
中期米国債 | 15% |
長期米国債 | 40% |
金 | 7.5% |
商品 | 7.5% |
ポートフォリオで注目するのは株式の割合が全体の30%と通常オススメされるリスク資産の割合よりずっと低いことです。私ですら60%を株式にしています。
これはレイ・ダリオ氏が言うように株式は債券より三倍リスクがあると言う考えから株式の割合が低くなっています。
またインフレの季節に対応するため「金」と「商品」の割合が15%と高くなっています。
景気拡大時に株式・景気後退・デフレ時にリターンが上がる米国長期債券に投資をしています。
本当にこんなシンプルなPFで十分なリターンが上がるのでしょうか?
紹介したポートフォリオの驚きのデータ
詳しくは本書を読んでいただきたいのですが(ポートフォリオを年一回リバランスすると仮定)リターン・下落リスク共に信じられないデータとなっています。
1984年〜2014年までのデータ
利回り9.72%
最大下落は2008年のリーマンショックの-3.93%、S&Pは37%の下落なのに!
1935年以降にデータを伸ばしても最大下落は1937年の-9%となっています。
もしこれが本当なら驚きのデータとなります。
本当なのでしょうか?
個人ブログの@garboflash さんはブログの中で検証しています。
米国株式:iシェアーズ・コア S&P 500 ETF
米国中期債:iシェアーズ 米国国債 7-10年
米国長期債:iシェアーズ 米国国債 20年超 ETF(ティッカー:TLT)
金:SPDR ゴールド・シェア(ティッカー:GLD)
商品取引:iシェアーズ S&P GSCI コモディティ・インデックス・トラスト(ティッカー:GSG)
S&Pのリスクとリターンが2006年以降リターン162.4%、ボラティリティ19.7%に大したこのPFは
ポートフォリオはリターン110.4%、ボラティリティ7.5%
リターンは低くなっていますが注目すべきはボラティリティがS&P500が19.7%に対して7.5%と大変低くなっています。
これはS&P500が標準偏差の二倍下落するとおよそ-40%(S&P500の平均リターンは7%ほどとすれば実際の下落は33%ほど)しかしレイ・ダリオ氏のオススメしているこのポートフォリオは15%ほどの下落しかしません。
40%の下落と15%の下落・・・
これは注目に値します。
我々日本人の最大の問題
このポートフォリオは米国人に対して紹介されたものでありドル建ての運用となっています。
我々日本人の最大の問題とは・・・
そうです、円高リスクです。
リーマンショック時にはドル円が120円から最大76円と30%近い強烈な円高がやってきました。
円建て表示だとレイ・ダリオ氏のポートフォリオでも20%以上の損失が出てしまいます。
・・・ただし
実はリーマンショック時でも米国長期債券を持っていればそれほど損失が出ていなかったと言う話もあります。
私の知っている人でリーマンショック時に米国割引債を持っていた肩がいましたが、その時は円高以上に債券価格がドル建てで上昇してほとんど損失がなかったと話されていました。
リーマンショック時の米国長長期債券ETF:バンガード 超長期米国債 ETF(EDV) のチャート
株式のように債券価格が上昇しています。(その後暴落しますが、これは2009年に米国株式が上昇を始めたからです)
円高と株安も同時ではなく米国株式は2009年2月ごろを底に上昇は始めますがそのころは90円代の為替でその後2年間70円代の円高、円高は2012年の秋頃まで80円割れが続いていました。
当時は米国株式が上昇しても円高が続き円建てでは含み損が減らない厳しい時期でした。
もう一つの問題は日本の債券のリターンが現在ほぼゼロであることです。
まとめ
本書はレイ・ダリオ氏の紹介したポートフォリオだけでなく資産運用として大切なコストと長期間の運用・・そして市場を負かすのではなく市場のマネをすることの大切さを書かれている予想以上の良書となっています。
私が本書で考えさせられたのは
「実は予想以上のリスクを取っているのではないか?」と言うことです。
株式を全資産の6割も投資をしているのはレイ・ダリオ氏から言わせればリスク過剰なのではないかと言うことです。
本書でも警告している
「個人投資家は本人が考えているほどリスク許容度が高くない」
これには身につまされる意見です。確かにその通りだと思います。
個人的にはインフレに対抗して金を入れると言う考え方は否定的でしたが(金はリターンを生まないため)リスク分散の一貫としてインフレ時期の対応として金に投資をするのも悪くないかもと思えるようになりました。
実際この20年のリターンは平均6%ほどあります。
現金の割合を少し減らして全体の一割ぐらい金に投資をしても問題ないように思えます。
現在は全体の4割が現金となっている。
債券に関しては円高・円安半々に賭けて内債・外債半々にするのもいいと思います。
外債否定派でしたが、現金の半分外債に割り当てようと思います。
株式は非課税口座で運用して、それ以外の資産は金と外債含めて分散していく。
リターン向上よりリスクにより敏感になり大幅下落時のダメージを減らすことを重視したいと思います。
海外セミリタイア向け「オール・シーズンポートフォリオ」はまた別記事で紹介します。
・・・と言いつつ結局、このままのポートフォリオになりそうですが、株式に関してはコストを重視して非課税口座のみの運用をしていきたいと考えています。
コストとリターンの関係は別記事で書きます。
この本は投資本として久しぶりに面白い本でしたね。